不妊治療を始めてから、ずっと頭のどこかにあったのは「このまま仕事を続けていて授かれるのか」という不安でした。
当時の私は、不妊治療も仕事も、どちらもうまくいっていない看護師でした。
最初はただ、「とにかく早く赤ちゃんがほしい」という気持ちで始めた不妊治療でした。
でも、通院のたびに職場へ気を遣い、シフトを調整してもらい、心は少しずつすりへっていきました。
何事もない顔で働いてはいたけれど、内心では、私はみんなにどう思われているんだろうと、いつも不安でした。
そんな毎日が続くうちに、不妊治療と仕事を両立すること自体が、少しずつ苦しくなっていきました。
そんな中、私より後に結婚した同僚が、いつの間にか妊娠して産休に入っていく。
もちろん、おめでたいことです。
でもそのたびに、祝福したい気持ちと、置いていかれるような気持ちが入り混じっていました。

気づけば、「不妊治療のために仕事を辞めるしかないのかもしれない」と考えるようになっていました。
でも、簡単には辞められませんでした。
経済的に不安だったこと。
そして、辞めても妊娠しなかったらどうなるのか、それも怖かったからです。
それでも心と体は限界で、「妊活 仕事 辞める 看護師」みたいな言葉を通勤電車で検索しながら、出るはずのない答えを探していたのを覚えています。
この記事では、不妊治療と仕事の両立ができなくなり、休職まで追い込まれた看護師の実体験を書いています。

転職を6回経験し、不妊治療中の転職も、育休中の転職もしてきました。そのときどきで私はいつも、「これが今の自分にとっての正解だ」と思って選んできました。
でも今振り返ると、不妊治療と仕事の両立に、これが正解だと言い切れる答えなんてなかったのだと思います。
ただ経験してわかったのは、答えが出ない中でも、自分を守るための準備はできる。そんなことを、私自身の失敗も含めて書いていきます。
これは、「仕事を辞めたほうがいい」と言いたい記事ではありません。
ただ、不妊治療と仕事の両立に悩んで、「辞めるしかないのかも」とひとりで抱え込んでいる看護師さんに、少しでも寄り添えたらと思って書いています。
妊活を続けながら転職することも考えている方は、面接でどこまで伝えるべきかをこちらの記事でまとめています👇
➡妊活中に転職してもいい?看護師が面接で悩む「伝える・伝えない」の判断基準【体験談】
看護師の仕事と不妊治療の両立は、想像以上にきつかった

私は引っ越しをきっかけに転職し、そのあと不妊治療を始めました。
常勤だけど日勤のみで、条件だけ見れば「ここなら家庭と両立できそう」と思っていました。
でも、実際に働き始めてみると、思っていた働き方とはかなり違っていました。
毎日とにかく忙しい。人間関係もどこかピリピリしている。
休みは取れなくはないけれど、なんとなく肌に合わない。そんな感覚が入社時からずっとありました。
仕事のストレスをつねに抱えたままではありましたが、年齢のこともあり、不妊治療は休まず毎月行いました。
事前の検査では夫婦ともに大きな異常はなく、私はどこかで「きっとそのうち授かれるだろう」と思っていました。
でも現実はそんなに簡単ではなく、結果が出ないまま、治療は少しずつ長くなっていきました。
- 通院のために毎月休みを取ることへの罪悪感
- 体調が悪くても簡単には休めない空気
- 思うような結果が出ないことへの焦り
仕事のことも、治療のことも、どちらも頭から離れませんでした。

本当は「赤ちゃんを迎えるための妊活」のはずなのに、いつの間にか私は、「妊娠して、少しでも早く今の職場から離れたい。そのための不妊治療」みたいに考えてしまっていました。
そのことに気づいたとき、なんて心が疲れているんだろうと思いました。このままどうなるのかなと…あの頃は隠れてよく泣いていました。
激務の中でなんとか両立しようとしていましたが、結局、心と体のバランスを崩し、私は休職することになりました。
不妊治療で「仕事を辞める」以外の選択肢が見えなかった理由

つらかったのは、辞めたいのに、辞められなかったことでした。
いちばん大きかったのは、お金の不安です。

そのころ、夫の転職をきっかけに、我が家の世帯年収は以前の半分以下になっていました。
不妊治療には思っていた以上にお金がかかる。
もし子どもを授かれたとしても、そのあとにもお金はかかる。
今ここで仕事を辞めたら、ますます苦しくなるかもしれない。そんな不安ばかりが大きくなっていました。
頭の中は、いつもお金のことでいっぱいでした。
でも、苦しかったのはそれだけではありませんでした。
- 治療は毎日あるわけじゃないのに、辞めて何をするんだろう
- 仕事を辞めたら、治療のことばかり考えてしまいそうだった
- 子どももいない、仕事もない自分になったら、何も残らない気がした
辞めたい。でも、辞めた先の自分も怖い。
あの頃の私は、その間でずっと揺れていました。
それでも生きていくために、肌に合わないと感じる職場に通い続けなければならず、毎日体を引きずるように通勤していました。
そしてある日、突然、電車に乗れなくなりました。
そこでようやく、私は休職することになりました。
仕事から少し距離を置いて、はじめて冷静に考えられるようになりました。
そのとき気づいたのは、うまく両立できなかったのは、私の努力不足ではなく、自分に合わない環境に無理をして身を置いていたからだったということです。
不妊治療と仕事の両立は、根性や気合だけでどうにかできるものではありませんでした。

「不妊治療中の看護師=仕事を辞める」だけが答えじゃない

しばらく休職させてもらい、復職のことを考えたとき、どうしても元の職場に戻りたいとは思えませんでした。
そこで私は初めて、不妊治療を続けながら「環境を変える」という選択肢を真剣に考えました。
本当は、お金のことも、その先のことも、もっと冷静に考えたほうがよかったのだと思います。
でもあの頃の私は、そこまで考えられないくらい限界でした。
選んだのは、精神科クリニックへの転職でした。
- 平日の通院スケジュールを調整しやすそうだった
- 身体的な負担が少なそうだった
- 以前から興味があり、きちんと学びたい分野だった
今振り返ると、あのときの私は、誰かに確認したわけでもなく、ただ「なんとなくこっちのほうがよさそう」という感覚だけで決めてしまっていました。
「不妊治療のためにどうするか」だけで考えるのをいったんやめて、自分が少しでも無理なく働ける環境を基準に選びました。
でも、人生は思うようにいかないものです。
転職が決まり、退職も確定し、「来月から新しい職場で勤務」というタイミングで、妊娠がわかりました。

転職を何度経験していても、しんどい時期にひとりで進める転職活動は、どうしても視野が狭くなりやすい。
この経験を通して、私はそれを痛感しました。
筆者の経験から伝えたいこと

正直、あのときは院長やスタッフのみなさんに、本当にご迷惑をおかけしてしまったと思っています。
それでも、理解してくださる方々のおかげで、産休・育休を取らせてもらうことができました。

今振り返ると、運が良かった面も大きかったと思います。転職という結果だけを見れば、正直失敗だったと思う気持ちもあります。
ただ、妊娠中の約半年間働かせてもらったそのクリニックは、本当に働きやすい職場でした。
つわりで体調がつらい日でも、「それでも行きたい」と思えるほどでした。
産後も「早く復帰したい」と自然に思えましたし、育休中にも何度か声をかけていただいて、実際に働かせてもらったこともあります。
この経験を通して思うのは、不妊治療と仕事の両立がつらいとき、「辞めるしかない」と思い込まなくてもいいということです。

環境を変えることが、必ずしも正解になるとは限りません。
でも、今の職場だけがすべてでもない、ということはお伝えしたいです。
もし転職を考えるなら、不妊治療中も、妊娠後も、その先の育児も見据えて、今だけ何とかする働き方ではなく、長く続けられる環境かどうかを考えておくことは大事だと思います。
一般的には、「迷惑をかけるなら転職するな」と思われることもあるかもしれません。
でも、心も体もボロボロになるほど追い詰められているなら、環境を変えることには十分意味があると、私は今でも思っています。
たとえ一度看護師を辞める選択をしたとしても、また働くことはできます。
ブランクがあっても復帰している人はたくさんいて、それは看護師という仕事の強みのひとつだと私は感じています。
看護師の働き方の選択肢は、実は思っているよりずっと多いです。
だからこそ、「もう辞めるしかない」と思い詰める前に、今の職場以外にも自分が続けられる場所はあるかもしれない、その視点だけは持っていてほしいと感じています。
不妊治療と仕事を両立しやすい職場の選び方を整理したい方は、こちらの記事も参考にしてください👇
➡不妊治療と仕事を両立したい看護師の転職先の選び方|休みやすい職場の見極めポイント
今なら、不妊治療中という状況でひとりで転職活動はしない

長くなってしまいましたが、今回の経験を通して私がいちばん強く感じたのは、転職活動をひとりで進めるべきではなかったということでした。

不妊治療中は、心にも体にも余裕がなくなりやすい時期です。そんな中で、私は自分の気持ちだけで転職活動を進めてしまっていたのだと思います。
結果としては、院長の人柄に恵まれ、制度も使わせていただくことができました。
でもそれは、運が良かった面も大きかったのだと思っています。
もし別の職場だったら、まったく違う結果になっていた可能性もありました。
だから今振り返ると、あのときはもっと誰かに相談したり、内部事情を確認したりしながら進めたほうがよかったと感じています。
もちろん、転職サイトやエージェントが合うかどうかは人それぞれです。
実際、私自身も過去に相性の合わない担当者に当たり、嫌な思いをして退会したことがあります。
それでも、自分ひとりでは聞きづらいことを確認してもらえたり、職場の雰囲気や内部事情を教えてもらえたりする存在がいるのは、やはり心強かったと思います。
不妊治療中のように事情が複雑な時期ほど、ひとりで抱え込まず、信頼できる相手を見つけて一緒に考えることが大切だったのだと、今は感じています。
転職サイト選びで迷っている方は、実際に登録して感じた違いをこちらの記事でまとめています。
➡看護師転職サイトはしつこい?5社利用して分かったエージェントとの上手な付き合い方
まとめ|「辞めるしかない」と思ったときこそ、環境を見直していい

もし今、
- 「妊活中は仕事を辞めるしかない」と思っている
- 辞めたいほど追い詰められている
- でも経済的な理由で辞められない
そんな状況なら、どうか自分を責めないでください。
不妊治療と仕事の両立がつらいのは、あなたが弱いからではなく、今の環境が合っていないからかもしれません。

「不妊治療が上手くいかない=仕事を辞めるしかない」
あの頃の私は、本気でそう思っていました。
でも今振り返ると、辞めることだけが答えではありませんでした。
かといって、無理して続けることだけが正解だったわけでもありません。
だからこそ、「今すぐ辞める」か「限界まで我慢する」かだけで考えなくていいのだと思います。
働き方を変える。
環境を見直す。
誰かに相談する。
そうやって選択肢を増やしていくことで、別の答えが見えてくるかもしれません。
「辞めなくて済む道がないか」を考えてみること。
それだけでも、限界にいる自分を救うための一歩になるかもしれません。
転職して環境を変えたあとに、別の後悔が出てくることもあります。私自身が転職後すぐの妊娠で感じたことは、こちらの記事に正直に書いています👇
➡転職後すぐ妊娠した看護師が後悔したこと。踏みとどまる選択もあった話


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