
「精神科って楽って聞くけど、本当?」
「子育てや妊活と両立できるって聞いたけど、実際どうなの?」
そんな疑問を抱えて、今この記事にたどり着いたのではないでしょうか。
確かに、精神科は「処置が少ない」「急変が少ない」などの理由から 「楽そう」というイメージを持たれることが多い診療科です。
ですが―― “精神科=楽”という考えだけで転職を決めるのは、かなり危険。

結論からお伝えすると決して楽ではありません。
実際に働いてみると、求められるスキルや精神的な負担は別の意味でハードな面もあり、 「思ってたのと違った…」と感じる人も少なくありません。
精神科は楽?それとも違う?ざっくり比較してみると…
項目 | 一般病棟(内科など) | 精神科病棟 |
---|---|---|
医療処置の量 | 多い(点滴・採血など) | 少なめ(服薬管理中心) |
急変対応 | 頻繁にあり | 比較的少ない |
業務のスピード感 | 時間との戦い | じっくり対応しやすい |
対人対応 | 患者+家族対応中心 | コミュニケーション重視 |
精神的負担 | 体力的にきつい | 精神的にくる場面も |
私は新卒で精神科を経験しその後一般科を経験しました。
そこで感じたのは「たしかに身体的には少し楽かもしれない。けれど、精神科は簡単ではない」という現実でした。
この記事では、精神科看護師に転職する前に知っておきたい5つの真実をお伝えします。
この記事を読めば、精神科へ転職を検討している看護師さんの参考にして頂けると思います。
真実①:なぜ精神科は「楽」と言われるのか?その理由と背景

精神科は他の診療科と比べて、身体的な業務負担が少ないことから「楽そう」と言われがちです。
例えば、急性期では点滴、吸引、採血、ルート確保、移乗介助などが頻繁にありますが、 精神科では医療処置の頻度がぐっと下がり、服薬管理や観察が中心になることが多いです。
医療処置が少なく、時間に追われにくい
命に直結するプレッシャーが少ない
とくにこれらの点が「楽」という印象となっているのではないかと思います。

たしかに、育児や妊活と両立したい人には、これらの点は大きなメリットです。
育児中、妊活中は時間の融通がいかに効くかという点が重要ですから…
このような精神科の印象から「楽」と考えてしまうのは危険です。

真実②:実際に働くとどう?精神科の現場のリアルな本音

一方で、実際に精神科で働いてみると「体力的には楽でも、メンタル面がきつい…」と感じることがあります。
✔患者さんとの会話が成立しない
✔状態の悪化している患者さんには突発的な暴言や暴力に備える緊張感がある
✔変化が目に見えにくく、達成感が得にくい
✔感情に巻き込まれることがある
精神科病棟で辛かったエピソード
受け持ちの女性患者さんは、患者間でよくトラブルを起こしてしまう人でした。(病名は伏せます)
昨日まで仲良く過ごしていた患者さんに突然「あの人はわたしを見下している」と激怒したり、昨日まで怒っていたのに今日は至近距離まで接近し仲良く会話したり…。
それはスタッフに対しても時々向けられました。
わたしが検温のあとに「無理せず過ごしてください」と伝えたところ、午後から突然怒った顔でやってきて「あなたはわたしをバカにしている!バカにするな!」と激怒。
しばらく口をきいてもらえず、「受け持ちを外してくれ」と師長にまで言っていたとか…

自分の悪かったところを一生懸命振り返りましたがわからず、しばらく出勤が憂鬱でした。
病状があまり良くなかったこともあり、その患者さんはその後保護室へ入りました。
疾患からくる精神症状だとわかっていても、攻撃的に詰められると精神的に負担が大きくなります。
「処置がない=平和」だと思っていた私は、 “精神的な緊張感”の強さにショックを受けたのを今でも覚えています。

受け持ち患者さんから拒否的な態度を取られると辛いものです。
患者さんとの関係構築が難しく、一筋縄ではいかないことが多いです。
真実③:精神科が向いている人・向いていない人の特徴

向いている人
✔人の話をじっくり聴ける
✔感情の起伏が少なく冷静
✔多様な価値観を受け入れられる
✔看護に“正解”や”答え”を求めすぎない
とくに一番上の「人の話をじっくり聴ける」は大切なポイントになります。
想像以上に話を聴く機会が多い精神科。
時には、まとまらない話を聴く場面もあります。
患者さんが言いたいことを整理したり、少しサポートすることもあります。
一般科以上に相談に乗る機会は多いと思っておいた方が良いでしょう。(むしろ部署によってはメインの仕事になります)
向いていない可能性がある人
✔看護=処置と考えている
✔すぐに結果を求めたい
✔緊張感が少ない職場を求めている
✔感情移入しやすく引きずってしまう
「精神科が楽そう」という動機だけで転職すると、 この“向き不向きのギャップ”に悩む人も少なくありません。
転職後の「なんか違った」「前の職場の方が良かった」を防ぐため、次の章で注意点についてお伝えします。
真実④:転職前に知っておきたい注意点と心構え

精神科看護には、他科とは違う特徴があります。

精神科と一般科の違いを知らずに転職し「思ってたのと違う…」と感じている看護師さんがいらっしゃるのも事実です。
ここでは、転職後のミスマッチを防ぐための注意点と、前向きに働くための心構えをお伝えします。
静かだけど「沈黙の圧」がある
精神科病棟は、機械音やナースコールが鳴り響くような急性期とは違い、一見とても静かです。
でもその静けさは、時に患者さんの不安や緊張を含んだ“張りつめた空気”でもあります。
沈黙の中にある感情を読み取る感性が求められます。
チームワークが超重要
医師・心理士・作業療法士・看護師…
多職種で支えるのが精神科の基本。
全体のカンファレンスほぼ毎日でした。
スタッフ同士でこまめに情報を共有し、連携しながら関わる力が欠かせません。
個人プレーよりも「チームで看る」「統一する」という姿勢が大切です。
観察力と記録力が命
患者さんの言葉や表情、しぐさの小さな変化を正確に記録に残すことがとても重要です。
精神状態の観察は定量化しにくい分、言葉の選び方や記録の精度が問われます。
医療行為が少ない=スキルのブランクになる可能性も
点滴や処置などの医療行為はほとんどない病棟もあります。
そのため、「手技がどんどん身につく環境」とは違います。
復職後に他科への異動を考えている場合は、スキル維持の面でも事前に確認しておきましょう。
「なぜ精神科を選んだのか」を明確にしておく
「何となく楽そうだから…」という動機では、続けるのが難しいこともあります。
転職理由をしっかり言語化しておくと、ぶれにくくなります。
必ず見学・体験入職をしておく
パンフレットや口コミではわからない“空気感”があります。
病棟の雰囲気・スタッフの様子・患者さんとの距離感などを肌で感じることで、入職後のギャップを減らせます。
スキルより「関わり方」を大切に
精神科では、高度な手技よりも“接し方”や“言葉のかけ方”が重要視されます。
会話に正解はありませんが、日々の小さな関わりが、信頼を育てていきます。
「すぐに成果が出ない」ことを受け入れる
急性期のように数日で回復・退院という流れではないため、
「看護の手ごたえが見えにくい」と感じることもあります。
でも、時間をかけて心を開いてもらえる瞬間は、精神科ならではの深いやりがいです。
実体験から一言
正直、精神科で働き始めた頃はしんどかったです。

「ありがとう」と言われるよりも「別にあんたに頼んでない」と突き放される方が多くて。
でも、関わりを続けていくうちに、ふとした瞬間に目が合ったり、少し会話が増えたりします。
そうした小さな変化が一番うれしくて、看護の醍醐味を感じられるようになりました。
まとめ:精神科は「楽」じゃない。でも、自分らしく働ける場所かもしれない

✔精神科看護師は、体力的には楽な面があり時間管理も融通が効きやすい
✔「感情の安定力」「関わりの深さ」が求められ、簡単ではない
✔向き・不向きを見極めることが転職成功のカギ
「もう少しゆとりある働き方がしたい」 「育児と両立しながら、看護師としても続けたい」
そんな方にとって、精神科看護師という選択肢は “自分らしく働く”ためのチャンスかもしれません。
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